なんでパンを焼いているのか

〈東京①〉ひかる通信はじまる

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1年間住んだ愛しきシェアハウス



 

突然上京することになり、
会社が施工した、
古い建物をリノベーションしたシェアハウスへ引っ越し。
どの部屋に住むかも、家賃も分からないまま(内覧ももちろんなし)
出身も職業も違う男女11人たちと一緒に
暮らすことになりました。
友人でもない、家族でもない、
ここに住まなかったら、絶対知り合わないような人たちと
「おかえり」「ただいま」と言葉をかわし、

ひとつ屋根の下で、同じ空気をすって一緒に暮らすことは、
ひとつひとつが新鮮で、東京に来たばかりの私にとっては、
とても心強く、賑やかで、あたたかい居場所でした。
(その後、シェアメイトと一緒に働くことになるとは夢にも思っていなかった)


会社がどんな建物をつくっているか調べてはいたけど、
実際に会社が施工したこのシェアハウスに住んでみて、
最高にかっこよくて、古いものへの愛着と
リノベーションによる空間づくりにドンドンドンドン興味がわく。

今まで、なんかいいなあと思っていたお店や空間を、
なんとなくではなく、何がどういいのかを紐解いて、
いろんなお店を見回って、自分の中で噛み砕いて
自分もいつかこんな空間をつくりたいなと夢見るようになる。

仕事はガッツリ現場仕事でした。
解体から、大工仕事
左官、タイル貼り、溶接、草刈りなど、
毎日ツナギを着て、いろんな粉にまみれて
大工のおじいちゃんたちに手取り足取り教えてもらいながら
建物が完成するまでのプロセス(新築じゃないけど)を
実際に自分の目で見て体感し、見よう見まねで働いた。

会社(社長)が本当に不思議でそのすごさは言葉には表せないけど、
何にもできない新入りにどんどん何でもやらせてくれました。


そんな刺激たっぷりの東京生活、こりゃ誰かに伝えたい!と
やっぱりなにか書きたくなるわけで、はじめたのが「ひかる通信」。
東京暮らしのことや、弁当のこと、シェアハウスのこと、仕事のこと、夢のことについて
他の人からしたらどうでもいいようなことをひたすら書いては
最初は友人たちに郵送したり、SNSにアップしていた。
「通信」いう響きが気に入って、
パン屋準備のときも「パン屋通信」として地道に書き続けることになる。
(オープンしてからはモヤモヤしていて、
まったく書いていなかったので、今書きたくて書きたくて震えている)

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〈就職〉ものづくりの現場で修行しよう

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学生時代、何度も眺めた琵琶湖と夕日

 

ポップコーンを弾かせているうちに
卒業を間近に向かえます。
この卒製を通して感じたのが、
もっと勉強しなくてはいけないということでした。

わたしなりに、
試行錯誤して実践した卒業制作だったのですが
やっぱりただの趣味の延長線で、
単に楽しいだけでは甲斐がなく、
何か面白いことを真剣にやるためには
技術面でも経験面でも知識面でも全然足りなくて
それでも自分一人で模索するのもひとつの選択肢かもしれないけど、
一人ではできないことを経験して学ぶために
会社があるのではないかという結論にいたり、
就職を考えます。

そんなタイミングで、
先生からある東京の会社を紹介されました。
その会社は、古い建物を改修するリノベーション業を主に行っていて
なんだかめちゃくちゃかっこいいシェアハウスや飲食店を施工しています。
「世の中を楽しく、自分も楽しく」が会社のモットーで
古いものへのリスペクトと、大胆なアイデアとユーモアのもと
施工から運営まで何でも行うということで、
社員5人いるかいないかくらいの、なんだかよく分からない会社だけど、
これは!と思い、すぐに連絡をしました。

卒業旅行のパリから帰って来たその翌日、
手土産のエッフェル塔を片手に、社長に会いにいくと
わたしのイメージしていた社長像と全く違い
その辺のベンチで、ファミマのコーヒー片手に軽い自己紹介と、世間話。
30分後くらいには「じゃ、一緒に働きますか」となり、
あれよあれよという間に東京で働くことに決まったのです。
大学卒業式5日前のことでした。

 

〈大学④〉自転車屋台をしよう

 

唯一の就活に落っこちて、
自分のやりたい働き方が見えてきたときに、
大学では、卒業製作がはじまりました。

この大学では、製作するだけでなく、
その製作についてのレポートも提出するため
1年を通して、そのひとつテーマについて研究・製作を通して
ひたすらに向き合うことになります。

この1年をなにに懸けようかと考えたとき、
自分のなかで決めていることがありました。

これまでの課題や、先輩の卒業制作をみて
制作するだけで終わるなんて、もったいないなとずっと感じていました。
美術ではなく、デザインを学んだのだから、
卒製では、作品をつくって終わるのではなく、
実際にそれを使って、社会や自分の将来に繋がりがあるようなことをしたい。

このときには、今までモンモンとしていたことについて
自分の中で考えがある程度まとまっていました。


・食に関するものづくりがしたい。
・デザインやイラストを手段になにかを発信したい。
・できる限り自分で行い、その一連を総合的に企画したい。

 

 そんなことを考えていたときに出会ったのが
「小商いのはじめかた」という一冊の本です。

この本と出会ったのが、
大阪のスタンダードブックストアという有名な本屋さんなのですが
スタンダードブックストアはわたしにとって学校のような存在でした。
もともとは、デザイン系の本の種類が豊富で、
しかもカフェで購入前の本が読めるということで入り浸るようになったのですが、
ここでは、いろんな分野のトークショーのイベントが頻繁に開催されており、
ナマで一流の人の話を聞くというのは、これ以上ない刺激で、とにかく面白かった。

学校がない日は、ほぼこの本屋にいて、
本とお話から、
学校では学べないような様々な分野の世界を知ることができました。

 


そんなスタンダードブックストアで紹介されていた
「小商いのはじめかた」。
副題が「身の丈にあった小さな商いを自分ではじめるための本」。

気になってページをめくると、
ああこれこれこれこれだ!!となりました。
震災後、新しい働き方や生き方を選択している人が
増えている
ことは知ってはいましたが、
気付けば、小商いについての本は
すでにたくさん出版されていて、
特にこの本では、簡単に分かりやすく文字で表されていました。

これは、ぜひとも卒業製作で実践したい!と思い
私の研究テーマは、「小商いの魅力発信の実践」、
製作テーマは「自転車屋台」となりました。

自分が小商いをするのなら、やっぱり食べ物を扱いたい、
そのための製作ということなら、屋台だろうと、
さらに、よりキャッチーで利便性のあるものならば移動式の屋台、
自転車屋台を製作することにしました。

なにを売ろうと考えた結果、
食品衛生法関係でなどの関係で
ポップコーンの販売を行うことにしました。
自転車屋台のポップコーンということで、
「チャリンコーン」。

上下可動式の開閉式の屋台
を設計し、
工房の職人さんと工学部のおじさんと一緒につくり
お店に関わるものを製作し、(もちろん新聞も!)
実際に学内やイベントに出店し、ポップコーンを弾ませる1年を過ごしました。

卒業制作に夢中になって、
卒業後のことの進路については、蓋をしていました。

 

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www.youtube.com

 

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〈大学③〉働くことについて考える。

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面接に落ちてから行ったイタリア旅行


 

私の唯一の就活は、
ライフスタイル雑誌で有名な
東京の某出版社でした。

エントリーシートや筆記試験・面接を
雑誌への情熱を語ることで乗り切り、
実質の最終面接で
(ここを乗り切れば、
あとは面談をして晴れて入社)
「この会社で将来的に何がしたいのですか」
と面接官に最後に聞かれたときに
「自分が制作・発行する雑誌をつくりたいです!」
答えたときの、部屋中に微妙な空気が流れたことが忘れられない。

まだまだ学生のわたしは、

オシャレな雑誌をつくる出版社への憧れだけで、
ちゃんと自分が
どんな働き方をしていきたいのか考えていなかった。

この会社が募集していたのは編集者で、
編集者は企画や取材をするもので、
雑誌のデザインをしたいのなら、グラフィックデザイナー
写真をとりたいのなら、カメラマン
雑誌の取材対象のものになりたいのなら、
その道のプロを目指さないといけないわけで、
大きな会社に属しながら全部やりたいというのは、
完全に空気が読めてなかったのです。

ということで、
面接でわざわざ協調性のなさをアピールして
見事落っこちる。

 

でもあの面接で、
自分がやりたいことがはっきりしました。

目の前にあるものが、
どのような思いや行程を経て出来上がり、
どのような人に届けられて、
それがどのように世の中に関わっているのかを

最初から最後まで自分の目で見届けることのできる範囲で仕事がしたい。


面接に落ちてから、
やっと、これからどんな仕事をして生きていきたいかを考えはじめました。

 

〈大学③〉雑誌をつくろう

 

大学3回生になると、
迫り来る就職活動に向けて
作品集、いわゆるポートフォリオをつくることになります。

せっかくなのだから
制作の作品だけでなく、
自分の趣味である、食や旅についても載せようと思い
雑誌のようにまとめることにしました。

愛読していた某出版社の雑誌のパロディをつくりはじめると
これがめちゃくちゃ楽しい。

写真、文字組、グラフィックなどの
これまで大学で学んだ技術と、
自分の好きなイラストと文を使って

必要なパーツを全部自分で構成するのが楽しくて
寝・食・授業を忘れて、夢中になってつくりました。

(今見ると、どんだけ自分すきやねんって
恥ずかいけど、熱量はすごいと思う)

調子にのった私は
これだけ夢中になるのだから、
これをこのまま仕事にできたら最高だと
3冊つくったボリューム満点のパロディ雑誌を両手に
その某雑誌の新卒入社試験に向かいました。


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〈大学②〉食への関心

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古い引き出しでつくった自家製オカモチ


話がそれますが
私は食べることが大好きです。
ここまで、絵をかくのがすきだと言ってきたけど、
正直、1番すきなのは食べることです。
自他ともに認める食いしん坊です。
おいしいもののためなら、どこでも駆けつけるし、
おいしいものをお腹いっぱい食べること以上の幸せはないと思っています。

食べることだけでなく、
大学では、母からもらったアルミのお弁当箱がきっかけで、
弁当作りが趣味でした。
弁当作りって本当楽しいのです。
ひとつの箱のなかに、色鮮やかに食べ物を詰めていく作業が、
芸術的でデザイン的で、それひとつでアート作品になって、しかもおいしくて、
弁当作りに夢中でした。

食といえば、制作演習でだされた課題
「女性のためのビジネスバック」。
もうすぐ社会人になるのだから、
自分で仕事用の鞄をこしらえよというものです。

そこで私がつくったのが「岡持ち」でした。
布を扱うのが苦手だったため、
できるだけ木材の制作をしたいという理由もあったのですが、
きっといつか「食」に関わる仕事をするのだろうと思っていました

古道具の引き出しを組み合わせてつくったこのオカモチ、
今も現役で使用していて、
パン屋の移動販売で使ったときはとても感慨深かった。



このオカモチをつくって、実際に使用することで、

ものづくりや、古いものや、食に関する仕事に興味をもち、
イラストやデザインが主役の仕事をしたいというよりも、
それらをより魅力的にするための手段なのではと考えるきっかけとなりました。

 

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オカモチにサンドウィッチつめてピクニック。
こういうのがすきですきでたまらない!

 

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弁当つくってはあそんでいた頃。
この後、社会人になって弁当全盛期を向かえることになる。

 

 

 

 

 

 

 

〈大学①〉イラストレーターになろう

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なんかやらな!と
とにかく手を動かそうと思い、
大学2回生になると
アートフェスタに出店することにしました。

どんなことをしようかと考え

当時夢中になっていた、
食と旅のことについて、
絵と文字でかくことにしました。

旅行にいって、いろんなもの見て食べて、
ひたすら書いて、出店する。
これが楽しくて楽しくて、
京都、名古屋、東京いろいろなアートフェスタに出ました。

有り難いことに私のまわりには
心優しい友人たちがたくさんいて、
うまいうまいと褒めてくれるもので
どんどん肥大化する自己評価のもと
そのうち課題でもイラストでごまかすようになって、
せっかく大学でデザインの勉強をしに来たのに、
イラストレーターなるもん、と
デザインのことなんて放ったらかしでした。

でも、そのうち気付きます。
イベントにどれだけ出店したって、
どれだけ私が思いを込めたところで、
「わたしはこれがすき!」じゃ、一方通行で、
すきなものをすきなようにつくるだけでは、
何も問題解決しない。
なんだかむなしくなって、
どうすればいいのか考えはじめました。

 

 

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などなどなど…